耳が不自由なのに達者なピアノを弾く。と、成れば何よりも奇跡でしょう。4月11日はベートーヴェンの《大公》トリオが初演された日と記録されていますけれども、これは単に名曲が初演されたという記録だけではなくてベートーヴェンが公の前でピアノ演奏をしなくなった日でもあります。初演で共演したヴァイオリニストとチェリストが同ベートーヴェンのピアノに合わせたのかは想像でしかありませんけれども、初演の場に集った人たちはベートーヴェンに楽譜を見せて貰ったと言うことです。
ベートーヴェンに楽譜を見せて貰って、ようやく《大公》トリオがどういう音楽なのか聴き手は理解できたようです。その様子を観てきっとベートーヴェンは、自分でピアノを演奏して聴かせることを断念したのでしょう。それを周りがチヤホヤと、新作に興味を持っているんだなと感じたとしたならば・・・ベートーヴェンの名前は今どうなっていることでしょうか。