嵐が扉を烈しく打ち開いた音に、ジークリンデは大きな悲鳴を上げる。怖がらないで大丈夫だよ、入ってきたのは、ほらっ、春の兆しだ・・・、と紅潮したままのジークムント。ジークリンデは夫のフンディングの手下達が入ってきたのかと驚いたのでした。誰もいないことが確認できると、若い2人の抱擁はエスカレートしていく。ジークムントは父の残した霊剣ノートゥングを得た心強さ、トネリコの幹に深く突き刺さっていて誰にも抜くことの出来なかった剣をことも容易に抜き取った男に期待感を高めるジークリンデ。不安で抑えていた感情が吹っ切れると、2人は身体を重ねてしまう。そして2人はフンディングの家から逃走する。
「冬の嵐は過ぎ去り、快い月となった」(ジークムント)
「寒い冬の日々に私が憧れていた春こそあなたです」(ジークリンデ)
無限旋律と言われるワーグナーの音楽のもっともたる「ワルキューレ」の中で、烈しく扉の開く音楽の後一瞬の間があって優しく春が入ってくる。アリア「冬の嵐は過ぎ去り、君こそは春」としてテノールのレパートリーとして古くから張りのあるテノール歌手は得意としています 。ワーグナーの音楽は作品の世界観などの要素が深く影響しているので、単独で歌われることは少ない。きっと歌う方も気持ちを持って行くのが難しい曲なのかも知れませんね。
その点、愛の場面を切り抜いたと思って歌ってもらった方が苦労の果ての安らぎとの遭遇の歌ではなくて、醸し出すエロティックが楽しめるんじゃないかしら。
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