2010-12-01

日本一厳しい評論家・西条盤鬼先生の推薦盤★ハイティンク、ラヴェル:管弦楽曲集 英PHILIPS Hi-Fiステレオラベルの初期盤

2010-12-01 0

推薦盤をやたらと指名しない勇気は大切だと思います。わたしも情が入るととにかく誉めることをしてしまうので、注意したいと近頃時々思うようになりました。でも淀川長治さんが語っていた、どんな映画にも見所がある。本筋ではないところにきらりと良いところがある。とおっしゃっていたことは長いこと、わたしの身体の奥にストンと着床しています。その卵を成長させるようにして、素敵な部分を見つけて評価するようにこれまで続けてきました。

ついでながら、淀川長治さんは日曜洋画劇場の解説部分だけを撮るだけで放送は観ないとおっしゃっても居ました。放送はスポンサーとの兼ね合いがあって表現が変更されたり、放送時間との都合でカットされています。だから、淀川長治さんが「ここは見逃さないで」といっていたところが実際はオン・エアされていなかったことも少なくないようです。

生命感に満ちあふれてる★アバド、ロッシーニ:序曲集 ブルーリング・ラベル、1stラベル

絹の階段(きざはし)は、絹のはしごという題名もあって紛らわしいですね。ロッシーニは76歳まで長生きして、しかも裕福な生涯を送った商才のある作曲家でした。元来の客扱いが巧みな人だったのでしょう。でも才は豊だったから、稼ぐために入団したオーケストラで吹いて沸いた作曲の仕事を最初にこなしたのが、若干18歳の時。二十歳の時の第2作「試金石」がロッシーニの将来を文字通り決定づけました。しかも上演してヒットした場所がよかった。かのスカラ座だもの。

どれだけの歌手や作曲家が、このスカラ座で自分の演奏や作品が称賛されることを夢見て頑張っていたことでしょう。それなのに、それなのに、ロッシーニ青年は「試金石」の大ヒットで兵役免除されたことを喜んでいます。もしかしたら、その必死な願いで才能を開花させたのかも知れません。それから書くオペラ、上演する度に大ヒット。20年間の間に38曲のオペラを総てヒットさせています。ところが、ところがよ。37歳の時に「ウィリアム・テル」を上演した後であっさりと料理人に転身しちゃった。やはり、直接お客の反応が一人一人感じられるレストランの方が良かったのかも知れませんね。

さて、短い期間にたくさんのオペラを作曲したから、似たような題名のオペラがあったって仕方がありませんね。

音楽とは"価値"ある生命が発散しているって感じるもの★フルトヴェングラー、ワーグナー:序曲、前奏曲集 レッド・ラベル、独ELECTOROLA盤

楽譜と演奏を前にして、まず問うべき事は音楽とは何かという事だ。音楽というものは生命であり、その大切なものは正確に演奏されたかどうかを問題にするものではない。フルトヴェングラーは楽譜を演奏していない。楽譜に書かれている音楽としての"価値"を演奏していたのだ。彼は・・・そうだ。

フルトヴェングラーの指揮姿は映像で見る機会が増えました。わたしが初めて動くフルトヴェングラーを見たのは、故志鳥栄八郎先生を招いて開催された映像上映会でした。フルトヴェングラーを中心にした音楽ドキュメンタリーのフィルムでしたが、正確なタイトルやその内容は良く憶えていません。ただ、フルトヴェングラーの指揮する姿は妖怪のようでした。長身で特に長い指揮棒で、肩の動き頭の動きが指揮棒が動いていると言うよりも、指揮棒の先が支点になっているマリオネットのようでした。

演奏しにくいだろうな、と思ったようにベルリン・フィルのメンバーよりもウィーン・フィルのメンバーが明け透けに、指揮棒を見ていると演奏しにくいから指揮姿は見ないで演奏をしたといったことは面白かった。要は指揮棒を見なくてもフルトヴェングラーは伝えたい、創り上げたい音楽を共感させることが出来るオーラを発していたのでしょうね。フルトヴェングラーとウィーン・フィルのワーグナーの序曲、前奏曲集はEMIからリリースされている録音が名盤でもあるけれども、ドイツ・プレスのELECTOROLA盤でも聴いてみると新たな発見があるはず。レコード技術が日進月歩の進化をしていたエネルギーをいっぱいに音盤が記憶しています。

中学校では習うのに、通になるほどに聴かないままの名曲がありませんか★スターン、バルトーク:ヴァイオリン協奏曲 No.1,ヴィオッティ:ヴァイオリン協奏曲 No.22 6EYEラベル、溝あり

中学校で習うクラシックとして、「これだけは知っておきたい」とされているヴィオッティですけれども大演奏家の録音が少ない。日本の学校音楽教育は特別だ。とは思われないのが、アイザック・スターンと言った大演奏家が録音しているのですから「モーツァルトは子供時代には自由に演奏できるのに、大人になるほどに思い通りの音楽に出来ない」といったことに似ているのかしら。

そして、さてバルトークは世界初録音だったもの。PHILIPSのグリュミオーも世界初録音が多いヴァイオリニストでした。誰が先に録音するのかアメリカとヨーロッパでの奪い合いは戦争中からの欧米の伝統(?)。軍事だけではなくて、文化活動もしているんだよ、といった宣伝でもあったようです。ナチス・ドイツとベルリン・フィルの関わりが良くそれを表していますね。ドイツは戦争に負けて、フルトヴェングラー、カラヤンの録音はその殆どが忘れられることなく今わたし達が楽しむことが出来ています。米COLUMBIAのビジネス戦争は、スターンの数多くの素敵な録音をレコードでしかまだ聴けないままにしてしまっているように思います。

2010-11-30

グラモフォン会心の優秀録音★オイゲン・ヨッフム、オルフ:カルミナ・ブラーナ チューリップ・ラベル

2010-11-30 0

堅苦しい書き出しはしたくないけれども、聴けば「あぁ」と誰もが分かるクラシック音楽の有名なフレーズがあちこちにこぼれているのに、クラシックの曲であることがそれほど知られていないようなのでちょっこし説明から・・・作曲したカール・オルフは20世紀のドイツ人作曲家です。亡くなったのが1982年3月29日で、まだ没後30年にもなりません。もちろん著作権は充分に生きています。

「カルミナ・ブラーナ」が作曲され初演されたのが1937年6月8日。大成功の初演のあとに第二次世界大戦が勃発したので色んな事が曖昧になってしまったのではないかしら。テレビのバラエティ番組やクイズ番組を観ていると毎週1度は「カルミナ・ブラーナ」のワンフレーズが出てきますね。でも何故、わたし達と同時代のクラシック音楽=現代音楽という感じがしないのだろう。演奏会でも現代音楽が好きなクラシック通が集う感じでもありませんね。猥雑で面白い。

戦後レコードがSPからLPになると「カルミナ・ブラーナ」の名盤が早速登場。それがオイゲン・ヨッフムのステレオ録音盤です。大編成の声楽と管弦楽、特に打楽器の扱いは尋常ではありません。でも、この録音は優秀。ともかく優秀。どんなに優秀と誉めても何処か課題があったりするのですけれども、初めてこのレコードをオリジナル盤で聞いた時の感想は「レコードで聞いている感じがしなかった」です。

 

ロマンティックなG線上のアリア〜名演!!仏プレスの優秀録音★シューリヒト、J.S.バッハ:管弦楽組曲 No.2、No.3 1stラベル

今日的な音楽感からはあまりにもロマンティックすぎる"G線上のアリア"で、バッハの音楽ではないと最近の音楽評には書かれることもあるかも知れません。でも、"G線上のアリア"を聴きたいなぁと漠然と欲した時に飢えを潤わせてくれるのは、ロマンティックすぎるといわれる"G線上のアリア"が理想ではないでしょうか。

カール・シューリヒトといえば、マーラーやブルックナーな人ですがモーツァルトやブラームスは輪をかけて素敵です。録音はピカイチとは言えないけれども、モーツァルトの放送録音を聴いたのがわたしのシューリヒト初体験でした。初めて聴いたという時ではなくて、多くの評論家が素敵だと誉めるシューリヒトを胸の中にしっかりと抱くことが出来た時でした。指揮者に対して一時代前の音楽とか、現代的視野のあった指揮者だったとは言う事がありますが、カール・シューリヒトは未来を見据えていた音楽家ではないかしら。がっちりとファン層を掴んでいる音楽家といった印象ではないけれども、クラシック音楽好きがそれぞれの好きなシューリヒトの録音を大切に持っているようです。その1枚、1枚が丁寧に次の世代に受け継がれていくことがクラシック音楽の宝物だと考えています。

 

 
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