2011-08-19

音楽だけじゃないよね。 - 新人バンドへ先人からの伝達

2011-08-19
新人バンドがよく説得される言葉が『今だけ、ちょっと妥協しろ よ』『売れたら好きな事ができるから』。でもそれは嘘です。自分の信じることを貫いてブレークスルーしなかったら、そこから先も絶対にやりたい事はできない。やりたくない事をやらされて売れたって意味がない-山下達郎:ミュージシャン

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Fenderさん via mizunarei.sakura.ne.jp

音楽だけじゃないよね。でももう我慢もしないし、騙されないと思う。インディー生活をしてそこまで行った若いバンドなら、彼らのほうがよっぽどよくわかっているはず。

Kazuhito Fujiki:作、編曲家via facebook.com

インディー生活の内容次第だろうね。“今だけ、一寸妥協 しろよ”って言うのは、努力してほしいというマネジメン ト側の言葉だと思うの。言葉面だけだと折り合い付けようと言う事で、バンド側に我が強すぎるって事。
趣味指向を貫くのか、商品になりたいかと言う事。ただ男の人にお酒を勧めたり、男の人に抱かれたりすることと、お酒を飲ませたり、いやしてあげることは違う。ビジネスの風俗と、それを離れた性の追求とは違うのと同じだろうと、わたしなりの姿勢です。

良い音楽を作りたいからって、入れ込みすぎてもらっていたら一曲が上がるのにコストがかかってしまう。今はずいぶんゆるりとなっているけれども、松任谷由実さんにしても年間3枚、4枚のノルマが確かあった。山下達郎さんだってそうだったと思う。
クラシックで言えばカラヤンが生涯に700枚のレコードを出したことが驚きの記録のように取り上げられるけれども、契約しているレーベルに年間5枚とかってなっていれば、毎月新譜が出るのは当然。ポップスのアーティストの比じゃ無いリリースぶりだ。それのクオリティを保つのはすごいことだと思う。

カラヤンの録音スケジュールを見ると、同時に三つぐらいのセッションが行われています。一日に一曲ずつ録音していくんじゃ無くて、楽員の休憩中に別のセッションを行う。オーケストラ曲と言っても曲によって必要な楽器が違う
たとえばドヴォルザークの新世界交響曲では、トライアングルは第3楽章だけの登場だし、シンバルは第4楽章だけで必要。だから、第1楽章と第2楽章だけをある日は録音して、シンバルが必要なほかの曲を含めて第4楽章を録音するという具合。毎日のセッションでは同時にいくつかの曲を細切れの録音をしていて、それが商品として一枚のレコードになった時に統一された緊張感が持続しているって事がカラヤン・マジックだし、そこが好きなわけです。

緊張がほつれるからライヴで勝負だと言っていたカラヤンの好敵手の言う事もわからなくはないけれども、向き不向き、才能だと思うけれども、カラヤンに適応力があったという事でしょう。

話題をロックバンドの“新人”“妥協”に戻せば、ビートルズはデビューするためにEMIで録音する前に、DECCAのオーディションに参加していますね。それでも演奏は“新人バンド”ビートルズのアマチュア時代の真の姿だと思う。
EMIで録音する時にドラマーがリンゴ・スターに変わることを納得させられた。リンゴにしたってリチャード・スターキーでなぜいけないのかと思ったと思う。キース・ムーンなんてかっこいい名前だったらリンゴ・スターって名乗らないで済んだかもしれない。
そういうのは日本でも同じだと思う。バンド名が何かの商品名を思わせるような物だったら変更を求められるでしょうね。

山下達郎さんが今から出てくる新人バンドに期待している思いは良くわかるんだけど、もし、録音直前で山下達郎さんの代わりにリンゴ・スターで行くって、他のメンバーが決定していたらどうだっただろうか。

* * *

「カラヤンの録音スケジュール・・・」の下りは唐突な挿入みたいだろうけど、加えてこう言うケースも。カラヤンの録音データで謎とされているセッションがあります。ウィーン・フィルで行ったサロメのヴェールの踊りというオペラの一部。
録音日は同じで、録音年だけが一年違いの記録がある。前年同日にはウィーン・フィルはショルティとのセッションにいたので、カラヤンのデータは誤りという説。このショルティとウィーン・フィルがこの日録音していたのはかの名高い“指環”の録音。これがサロメの編成と同じだったわけ。
その時の録音スタッフの回想録によると、カラヤンが不意に単独でスタジオにやってきてショルティを激励したとか。とにかく“指環”の全曲ステレオ録音をするというのはとってもすごい偉業だったので、仕事ぶりを視ておきたかったのでしょう。補足ながら、カラヤンはショルティの成功後に全曲録音をベルリン・フィルでスタートします。
この時に10分ほどのサロメのヴェールの踊りを録音して立ち去ったと言います。カラヤン伝説の一つです。
翌年に正式にセッションが組まれていますから、レコードになっているのには二つの録音テープが存在する可能性が高い。
 

さて、ここでカラヤンのことを入れたのは、“妥協”の例としてです。一枚のアルバムを作るのに海外のスタジオに長期滞在するってケースがあるけれども、これってその期間に録音している事って無いですよね。たいてい帰国して仕上げる。海外スタジオの環境が、新しい何かを吸収させるんだろうと思う。
新人バンドはとかくしゃかりきになりがち。山下達郎さんは新人バンドに柔軟さを求めているのだろうと思います。考え方、視野。
カラヤンも最初から意図していたかはともかく、ショルティを訪問したら奇しくも次に発売予定の曲と同じメンバーのオーケストラがいた。“来年まで待たなくても良いじゃ無い”って感じで録音しちゃったんじゃ無いかな。
これって“売れたら好きなことが出来る”って例にも合いそうですね。

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